開業して17年が過ぎました。
開業当初から来院して下さってきた中高年の患者さんも高齢になってこられました。
私にとって、お一人思い出深い患者さんがいらっしゃいます。
近所で長年、自転車等販売を扱っていらっしゃた方で、とても優しい方で語り口は職人さんで、的確なアドバイスをして下さるので、家族やスタッフの自転車の購入に大変に助かっておりました。
開業してから暫くして、ご本人様より先にご家族のお嬢様方が受診して下さるようになり、とても嬉しかったのを覚えています。
ご本人と奥様は高齢になられ、やむなくお仕事を勇退されて時間が取れるようになってから、来院してくださいました。
その時に、お話しをさせてもらうと不思議とこちらの心が穏やかになっていきました。
当時、私は仕事と子育てで必死の余り心身共に疲労から自分の心の暗く澱んでしまう部分が浄化されるようでした。
そんな魅力ある方でしたから、かつてお店をされていた時はいつ見てもご主人を慕ってお客さんがいて仕事を忙しくされていたのだと再認識させてもらえました。
定期健診等で来院されるのが心待ちでした。
しかし、先日、90歳で大往生されたことをご家族の方から伺いました。
その日の終業後、この方のカルテを見直し、この方のように本当に自分に出来うる事を自分は出来ていたのかと自問しました。涙が止まらなくなりました。
感傷的であるかもしれませんが、ありがとうございましたと感謝をお伝えしたかった。
AI化が進む中、昭和な人間の話なのかもしれません。
直接、人と関わる仕事をしている限り、信頼してもらえる人柄こそが要。
そして、職人として真摯に仕事に向き合う姿勢。
あと、私も仕事に関わっていける期間が見えてくる年代となり、
優れた先人の方々の生き方をいつも見習えたらと思いました。